STORY

of

Lam-en D Gonnay




自分の食べ物が「おいしい・きれい・ただしい」か知り、産地を知り、それが安全であることを確認すること、小規模生産者を支援すること。若い世代に、食べ物がどのように生産され、どのように次の世代につなげていくかを伝えること — これは尽きることのない挑戦です。もしあなたがすでにそういった活動を行っているなら、前進し続けてください。自然は私たちと共にあります。もしあなたがまだ一歩を踏み出していないのであれば、明日ではなく今日始めてください。あなたと共に挑戦することを願っていますし、歓迎します。“Matatago tako losan” — ありがとうございます。

フィリピンのルソン島北部にあるコルディリェラという山岳地帯。ここには多くの先住民が暮らしています。その中のカリンガ県パシル市のダンタラン地区の先住民として生まれ、家族とともにその土地と向き合い暮らしを創り上げてきたラメン。自分たちにとっての当たり前が、社会の改革によってどんどん当たり前でなくなっていく。大切なものを見失うことなく、自分たちの足元を見て家族とともに立ち向かってきたラメンの活動の軌跡を紹介します。


PROFILE


名前 : Lam-en D Gonnay (ラメン・D・ゴネィ)	
コミュニティ/国 :  タグイボン族 / フィリピン共和国
現在の居住地 :   カリンガ州パシル市ダンタラン	
年齢:  56歳 (1964年生まれ)
取り組みや所属: 
農家
「パシル地域の伝統的食文化/先住民の叡智を保全するスローフードコミュニティ」代表


タグイボン族とフィリピン


7,109の島があり、人口約一億人のフィリピンでは、推定では、イスラム教徒を除き100以上の先住民の部族が存在すると言われており、総人口の1〜2割程度の人口があるとされています。タグイボン族は、ルソン島 北部に様々な地域に分かれて暮らしていると言われています。





自給的農業を営む

人口600人の村の赤米がつなぐ未来

 


私の名前は、ラメン・D・ゴネィです。フィリピンのコルディリェラ地方で、小さな農家をしています。ダンタランという村が、私の暮らしているところです。マニラ空港から13時間くらい夜行バスに乗ると到着です。

ダンタラン村の人口は約600名です。村人の主要な職業は農業で、主な農作物は米や野菜、豆、根菜類などです。私たちは、コルディリェラ地方の先住民族の中でも「タグイボン族」と呼ばれる部族に属しています。




村の人々のほとんどが、彼らの家族のために食物を栽培しています。「farmer=農家」と言っても、一般に考えられる大規模農家のように、土に触れたことがなくても数百万円の収入がある商業生産をしているわけではありません。自給的農家や小規模農家という表現が適切で、私たちはあくまで家族の自己消費と生態系・文化の維持のための農業を営んでいるのです。

私たちの村にある大切な赤米が、スローフードに参加するきっかけとなりました。これがなかったらスローフードが私たちを見つけることはなかったでしょう。近親交配や高品質な品種の導入のための品種改良により、私たちの在来の食べ物がどんどん失われて、ますます多様性が失われつつあることを心配していました。そんな時に、スローフードインターナショナルに出会い、2010年に開催された世界の食の祭典『Terra Madre』、そして2012年の先住民テッラマードレ『Indegenous Terra Madre』(スウェーデン)に参加し、スローフードの理念を学び、スローフードの活動に参加するようになったのです。世界中からあつまった生産者たち、食と通ずる各国の代表者と会い、小規模農家でもできることがあるということを知り、私たちの消えゆく文化や伝統を守るため、アドボカシーの活動を始めました。まだまだ知識が少ない私たちでしたが、勇気をもって動き始めることができました。


はじめに、私たちは米に焦点を絞りました。村内の米農家と連携をし、収穫した米を集めて処理をし、販売できるようにしたのです。コルディリェラ地方には、7つの地域があり、それぞれに私たちが大切にしているような在来の米があります。他の地域も同じように在来種の米が失われていることがわかりました。米だけでなく、他の様々な食文化が失われつつあるということも知りました。もう人々の食卓に上がらなくなっていたのです。そこで私たちは、各地域の食材や文化を祝うフェスティバルを企画しました。それをきっかけに、失われた先住民の食べ物のルーツをすべて辿っていけるようになりました。村のお年寄りたちと一緒に、いまでは提供されなくなってしまった食べ物のことや野山から集められる食べ物のことを話し、共有できるようになりました。



2010年にスローフード・インターナショナルのメンバーになってからは、コルディリェラ地方の先住民の農家を代表して、スローフードのあらゆるイベントや活動に参加し、情報発信キャンペーンにも力を入れています。村や学校など、集まりがあるときはいつでも声をあげています。私たちの活動は村内だけでなく行政区内でも認識されており、行政も積極的にバックアップしてくれています。私たちが小規模農家のためにプロジェクトを行いたいときは、要請に応じて地方自治体のユニットがサポートを提供してくれるようになっているのです。

活動を継続するため、2019年に村の人々も巻き込んでスローフードコミュニティを発足しました。コミュニティを形にしていくにあたり、まず近くにいる私の家族と2人の息子との共有から始まりました。その後、近所の人たち、村、市町村、コルディリエラの他の地域にと、どんどん広がっていきました。息子の一人は、2019年に北海道で開催された先住民テッラマードレにも参加しましたね。



農家のエンパワメントのための

スクールとラジオの活動


  私たちの活動として、まずひとつめに紹介したいのが『CLIMATE SMART FIELD SCHOOL』という農業技術や考え方を学ぶ場です。ちょうど2021年6月に開始した活動です。75名の参加者のうち、53名が女性、6名が男性、そして16名の若者がいます。菜園は3つあり、75名が3つのグループに分かれて、グループごとに菜園で野菜を育てています。


そしてふたつめの活動が『スローフードオンエア』というラジオによる情報発信です。いま、60名の農家の方々や一般のリスナーに向けて、毎週水曜日13時半から14時半時30まで配信しています。毎回、私たちの他に有識者を招いてラジオに登壇してもらっています。

ラジオ局は、フィリピン政府の国家栄養会議の公営で、村の中にあります。私たちの番組は、災害リスク管理の観点でこのラジオ局の主旨に沿っているとされています。伝統的な食の生産を伝えていくことが、リスク削減につながると言う考え方です。番組は、稲作のスケジュールと連動しています。種まきから、収穫まで、そして収量が十分にあれば、販売までサポートしています。また、自治体のイベント等で出来上がったものを材料として使ったり、買い取ったりするようにしているのです。

参加者はラジオを聞くだけでなく、対面でのセッションも用意しています。ワークショップのような指導もあります。参加者の学びの定着を図るために、毎回課題やクイズを出し、提出してもらっています。例えば、前回は「地域にある3つの失われつつある食材を見つけましょう」という課題をだしました。


もし、あなたが私たちと同じような取り組みをしたいとお思いなら、自治体との連携も考えてみてください。その場合、まずは自治体の中で私たちのやることに近しいプログラムを探してみてください。政府のプログラムは必ず組織につながるので、これは自分のコミュニティを作ることの利点でもあります。私たちはそれを見つけ、提案書を作って自治体に送りました。地元の農家にも説明を行いました。大切なことは、私たちが何者で何をしたいのか、ということ。自分たちの暮らす自治体のやることにおいても、私たちのやりたいこととは相反するようなこともあります。例えば、交配種の積極導入や化学肥料の奨励など、です。そういった取り組みではなく、地域の実情と本質的な課題の解決のためにすべき取り組みなどについて、きちんと意思表明をすることが大切です。



地域から生まれる様々な草の根活動たち


ここ最近の様々な活動も、紹介します。2019年には、在来種の鶏と黒豚の繁殖プロジェクトおこないました。在来の鶏と豚を村内の農家に分け、その数を増やす挑戦を行いました。農業研修所の資金援助を受け、42人の農家がこの活動に取り組みました。おかげで、在来の鶏と豚が復活することができたため、今では私たちがイベントをするときは彼らから在来の鶏や豚を買うことができています。食文化が継承されていく一助になりました。

そして、過度な機械化農業に対する動きとして、農耕牛の活用も継続しています。フィリピンでは2016年から農業の機械化に力を入れています。先住民の暮らす地域も例外ではありません。ですが私たちは過度な機械化を防ごうとしています。機械化による悪影響は、科学的なデータなどは私たちは持っていませんが、農耕牛を活用した栽培の方が収量が多くなった実績などもあり、土への影響・作物への影響は多大なものがあると思っています。

その他、先住民の伝統的な農業を守っていくため、農家にむけて気候耐性のあるサステナブルな農業のトレーニングを行う有機農法の奨励活動や、子どもたちに種や作物に触れてもらえる米糠を活用した飼料や肥料づくりを行うガーデンの開放活動も行っています。ガーデンでは、子どもたちに種とりの方法も教えています。学校では教えてくれないことですが、種を取る方法はとても重要です。これができないと、未来につなげることができませんからね。



未来につながる小規模農家の

価値創出とセルフエンパワメント


自分たちの活動に誇りをもち、継続していくために、必要な材料は自分たちで賄うことが大切です。私たちの行っている各地域の食材や食文化を祝うフェスティバルの活動が今では地域全体として盛り上がっており、観光局でも私たちのコミュニティをフードツーリズムに結びつけたいと考えています。将来的には、ファームツーリズムのサイトができることを期待していますし、それは私たちの文化や伝統を促進するもう一つの方法でもあると思っています。


コルディリエラの役人たちが、私たちのスローフードの活動を見て、彼らの集会をわざわざ私たちの村で開催したこともありました。一週間続く集会では、全ての食事を私たちの伝統食でもてなしました。村の外から仕入れたものはコーヒーくらいです。何百人もの人に、私たちの大切にしている伝統食を提供する機会となりました。

自治体はあくまでも金銭的アシストという立ち位置だと考えています。だから私たちはプロジェクトにおいて、自治体から種を受け取るのではなく、農家から提供してもらう形にしています。「明日の活動の時のおやつを作るのは、Xさんなので、Xさんが日当を受け取る」と言った形をとっています。食事やおやつは必ず伝統食にするというルールも設けています。食事やおやつを作った人が日当を受け取るのです。そして彼らは、食事やおやつを作るために材料を他所から買ってくるのではなく、自分の身の回りにある作物で作るのです。このことが自分たちのコミュニティのエンパワメントになります。自分たちが自分たちの人生の主人公となれるように力をつけて、自身の生活や環境をよりコントロールできるようになっていくのです。

若者や農家の養成・エンパワメントにも力をいれていますので、私たちの活動はいつもアドボカシーと紐づいています。すべての活動は、持続可能な計画のための一部です。村の仲間や都市部・外国に住む親戚の話を聞いていても、地域の郷土食や「知っている人・村」から来た食べ物に関心を示していると感じています。そのことから、町おこし・サステナビリティの文脈は関心を集めていることは明らかです。スローフードについて直接あまり知識がなくても、スローフードという言葉が使われ始めています。そして私たちもたまに「スローフードの人たち」と呼ばれます。それが関心の高さを示していると思います。

農家の面々は、地元の食材や製品、そして何よりも自分たちの食文化や伝統料理を提供することで誇りを持つことができます。VIPが現地を訪れるなどの機会があると、土着の伝統的なレシピの提供を求められます。これは以前まではあり得なかったことです。





私たちは自分たちの文化をもっと意識して、それを守るために戦う必要があります。 そういったことに関心が無いような人たちとも、さまざまな方法でコミュニケーションを取り続けなければなりません。そのためには、ネットワークを構築し、さまざまな国境を越えて協力し合い、アイデアや経験を共有する必要があります。


コルディリェラ地方は「フィリピンのベジタブルボウル」と呼ばれており、市場の需要に応じて野菜を供給することが求められています。そのため、化学肥料を導入するなどして大量生産を行い、経済的に成功しているところもあります。ですが私たちはそれをしません。よく、「なぜうまく行っているモデルを再現しないのですか?」と聞かれます。「なぜ市販の肥料を使わないのか?」 とも聞かれますが、答えはいつも同じです。「心配しなくても、スローフードの考えでやっているのだから、長い目で見れば自分たちのためになることはわかっている。それが豊かな未来への道だということを、スローフードのイベントに参加して学んできています」



ラメンの「プライドフード」


イナンチラ(INANCHILA)は、粉状にしたもち米を、特別に挽いた蘭の葉で炊き上げ、ココナッツソースをかけたものです。コーヒーと一緒に食べてもいいし、デザートとして食べてもいい。このレシピは、結婚式や伝統的な儀式などの特別な機会にのみ提供されます。カリンガ州内のどこでも手に入りますが、パシルが本場です。




ラメンの人生年表




1964	タグイボン(現在のダンタラン)に、4兄弟の末っ子として生まれる

	少年時代を村内で過ごす
	パシル市の高校を卒業
〜	10代のほとんどを農耕をしながら過ごす	
	トゥゲガラオのセントポール大学で測地学を専攻する
	農家の他、工事現場や電気技師としても働く

1991	結婚
2006	Peace Corpsからアメリカ人女性がダンタランに初めて訪問する
	アメリカに生産物を売るための農家グループの代表に就任する
	スローフードについて初めて知る
2010	スローフードのTerra Madre Salone del Gustoに初参加、メンバーになる
2012	スウェーデンの先住民テッラマードレに参加する
2017	Climate Smart Field School programを開始する
2019	スローフードコミュニティを立ち上げる
2019	在来の鶏と黒豚の種の保存活動
2021	Climate Smart Field SchoolとSlow Food On Airを運営中




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